長期インターンシップから「伸びしろ」ある新卒学生を採用して「中途採用の人材不足」の悩みを解消!

今回は、Eコマースサイト構築に用いられるオープンソースソフトウェア「Magento」の開発・構築を主軸に、リーディングカンパニーとして事業を展開されているベリテワークス株式会社の代表取締役社長浅賀桃子様とCTO西宏和様をインタビューしました。

当社は、「Magento」を日本に紹介するリーディングカンパニーであるがゆえに、求める人材像の理想は高いです。そこで長期インターンシップからの新卒採用がうまく機能しています。また学生ひとりひとりへよく行き届いた配慮があるからこそ、学生が新卒採用にまでつながったようです。

○企業紹介

ベリテワークスは、Eコマース分野で世界シェア1位のオープンソースプラットフォーム「Magento」を主軸としたソフトウェア開発、および浅賀社長発案の「スヌーピー心理学」を活用したメンタルヘルスカウンセリングの2つの事業を行っていらっしゃいます。2015年秋から半年間キャリアバイトでの求人をおこない、エンジニア職でのインターン生を3名採用されました。そのうち、1名がすでに正社員になり、2018年卒の内定者も決まっています。

1.「中途採用の厳しさ」に直面し、長期インターンから学生を新卒へ導く

―インターンシップ導入の経緯・目的は何だったのでしょうか?

西様(以下、敬称略):「中途採用の厳しさ」がありますね。もちろん中途採用をすることによって、即戦力の人材を獲得する、ないし完成されたノウハウを持った人間を連れてくる。そこで業務をさらに円滑にまわす。というメリットがあります。しかし、そのためには当然多くのコストがかかりますし、採用した社員が自社に「合わない」かもしれません。中途採用を一発で成功させることは難しいじゃないですか。ですから、インターンを通じて、長期的にお互いの関係をみながら、「本当にその人を採用してもいいのか」ということを見極めるということが、インターンシップ導入の目的となりますね。

浅賀様(以下、敬称略):もちろん「即新卒採用」を狙っているわけではないですし、インターンの活動を経て「実はIT業界向いてない!」という人も今後は出てくると思っています。そうなれば、それはそれでしょうがないですし、インターン生ひとりひとりのその後のキャリアに活かしていただければと思っています。でも、キャリアカウンセラーとして学生の相談に乗ることもあって―履歴書の書き方を見たりすることもあるのですが―、志望企業や志望業界をなかなか決められない学生が多いんです。なかには親御さんが「この会社に行け」と言うので、という理由で進路を決める学生もいるくらいです。「いやいや、そうじゃないでしょう」と思うわけです。一方で、もちろん、私たちが「じゃあうちの会社に入ってよ」とも言えません。そういった自身のキャリアは、1日2日の体験では決断できるものではないです。長期インターンの中である一定の期間、限られた中でも責任を持って仕事をしてみて、自分のキャリアについて考えてほしいと思っています。

―最終的には「新卒採用」へつながってほしいと思っていますか?

浅賀:そうですね、インターンをする中で、仕事や会社が「意外に向いているかも」と学生に思ってもらえて、新卒採用につながればお互いにハッピーだと思っています。インターンシップを経由してそのまま入社を希望してくれる学生は実務経験者として優遇採用したいと思っています。

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2.中途人材よりもインターン生の方が「伸びしろ」や「語学力」がある

―これからもインターン生を増やしていきたいのでしょうか?それとも中途採用も並行していくのでしょうか?

浅賀:企業の立場として、Magento経験者を中途採用できればそれに越したことはないですが、相当限られます。PHPがベースとなっているMagentoですが、採用要件として「PHPの経験がある」だけではなかなか難しいのです。Magentoはアメリカ生まれのパッケージで、かつ社内のメンバーも多国籍のため英語でコミュニケーションする機会も発生するので、英語に抵抗のないことも求められます。また、中途採用をするとなると媒体への掲載料や人材紹介会社の手数料も正直バカになりません。最近はPHPに触れた経験があって、かつ英語に抵抗のない学生も増えてきていますので、「将来性が見込める学生を採用して育てよう」ということで、インターン生を増やしていきたいと思っています。

西:結局、30代で経験者を採用しようとすると居ないんですよね。基礎スキルはあるのかもしれないけど伸び代がない人が多い。もう1つは英語の問題。「それまでは英語がなくてもなんとかなってきた人たち」が、「今そこで英語を覚えなきゃ」ってなったときに、なんとか英語を使わなくてもすむようにと逃げようとするケースも少なくないと感じています。そういう人を採っても私たちには意味が無いのです。

―プログラミング言語を知っていても、英語を使えるエンジニアが少ないということですかね?

西:英語が必ずしも流暢に喋れなくても良いのですが、「読みたがらない人」が多いように感じています。業務の中で、英語の文献を読む機会がどうしても出てきます。英語の1次文献があることがわかった時に、「日本語になっているものでないと読みません」「嫌です」となると、何年も最先端の技術から遅れてしまうんですよ。

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3.入社時にスキルは期待せず、入社後に育成する

―面接では学生のどのような側面を見ていますか?

浅賀:英語に関しては、英語に抵抗が無いかどうか、英語を調べるのが好きかといったところは見ていますね。また、小さい、若い会社なので制度的に整っていないところ等はもちろんあるだろうけれど、それでももっとよくするための方法を考えたい、一緒に何かを作っていきたいと思ってくれる学生、こういう会社だからこそできる経験があると考えるような学生であれば楽しくやっていけるんじゃないかと思っています。そういったマインドを面接中では見たいと思っていますね。

―スキルに関して、学生は確認しないのですか?

浅賀:そこまでは確認しないですね。もちろんパソコン触ったこと無くて、LINEのフリック入力しかできないと言う学生は困りますけど、ちゃんと学校でパソコンをやってて、PHPを授業でやってます、趣味程度でも本を買ってやってますとか、そんなところであれば大丈夫です。スキルを以って、落とすということはないですね。

―社内に入ってからスキルを身に付けさせるのですよね?インターン生育成のフローがあれば教えてください。

浅賀:はい、社内に入ってからですね。まず「Magentoとは」というところから入ります。「それを知ってます」と言う学生が来るとはこちらも思っていません。西が執筆し、Amazonで販売されているMagentoに関する電子書籍を読んでもらうところからスタートして、それから実際に触ってみることになります。

西:まずは自分の使える環境を作れるようになるところから入るパターンが多いです。Linuxのサーバーを立てて、そのなかの設定を全部自分でやって、自分が使うツールやアプリケーションが動いてできるようになるところが第1ステップで、それからデザインをいじったり、設定をいじったりしてできるようになってもらいます。まずは社内の開発環境を「壊して」学んでもらいます。お客さんの環境を壊さなければいいわけですから。

―書籍に関してですが、それは業務時間内に読んでもらっているのですか?

西:業務時間内に読むか、暇な時に読むかは学生に任せています。ただ業務時間内にしかやらない人が、業務時間外にもやる人が勝てるかと言うと、それはノーですよね。ある程度自分で伸びようとする力が無ければ、どの人もスキルは伸びないですね。

浅賀:業務中に本をお渡しして、もちろんシフトの関係で「次出るのが来週で」ということになれば、「持って帰って読んでいいよ」と言っています。読んでいるかは分かりませんが、伸びていれば「読んでいるんだろうな」と思っています。

西:読んでもらっているのはMagentoの電子書籍以外にも、PHPなど会社で持っている書籍や、Magentoの認定資格に関するものもあります。

浅賀:ちなみにMagentoの認定資格に関しては受験を推奨し、受験料も会社負担にしています。認定資格を取得したインターン生は時給アップとしています。

―それは学生のモチベーションも上がりますね。

西:その他にもIT系の資格やベンダー資格のように、弊社の業務に役に立ちそうなものであれば、参考書を購入する支援や、受験料の負担もしています。実際に、LPICを取りにいった子もいますね。やはり業務の時間内だけで、完結するほど甘い世界ではないですね。一部の先を走る人たちはもう「ブレーキのない車」のようなもので、どんどん先に走って行ってしまうんですよね。さらに弊社以外の会社が開催している勉強会への参加も推奨しています。参加費がかかる場合も会社が負担しています。

書籍や資格試験、勉強会など外部リソースを用いることで、学生が自主的に幅広い学習できるようになっていますね。あとは社内でのアドバイスも行っていますよね。

西:そうですね。自分でじっくり考える時間が大事ですね。答えをすぐに求めるのではなく、自分で考える力も必要です。

4.あくまで「学生は勉強するのが本業」を前提に

―社員とインターン生の仕事で異なる点はありますか?

西:社員は正規契約をして出社している人たちで、業務としては責任のある業務が付いてきます。インターン生の本業は学生なので、社員の監督・指導の下で作業をしつつ、徐々に監督・指導のウエイトを減らしていきます。そのためあまりに過剰な責任を負うことのないようにしようと努力はしています。システム開発業務に関する全ての責任を負うべきなのは私ですので、そこは私が見られる範囲で仕事を与えるようにしています。それも段階的に仕事の簡単なものから難易度が高いものへランクを上げていきます。一律に教育をしても仕方がないので、個人の資質や知識、スキルを見ながら、「この子にはこういうことを教えよう」と指導内容を変えています。

―インターン生はどれぐらいの時間出社してくれていますか?

西:授業のない4年生は週4日という人もいますし、授業がある子は午前か午後だけということもありますね。時期によっても異なります。家が遠い子もいて、授業等の都合で出社が難しい場合には在宅で仕事をしてもらっています。弊社ではアプリケーションを翻訳して日本語にする仕事があって、それは会社に来なくてもできます。社外のサービスを利用すれば、どれだけ作業をしたのかが分かります。こうした作業が、何よりインターン生自身の実績につながります。

浅賀:社内コミュニケーションツールの「Slack」等で出勤や業務の進捗状況の管理をしていますので、在宅でも無理のない範囲で働いてもらえるようにしています。

西:インターン生の内、2人が学校の授業の都合で、9月真ん中から11月中旬ぐらいまで、それぞれアメリカとオーストラリアに留学することが決まっています。そこは「もうしょうがない」と思っています。それ以外の期間は、本人の都合の許す限りで「来てね」と言っています。学業に影響が出るのは良くないので。

―学生の学業優先を配慮するお二人のご意見からは、インターン生育成にしっかりとした「哲学」が感じられます。社員さんからそう言ってくれるのは、インターン生は嬉しいでしょうね。

西:学生は勉強するのが本業ですから。


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2017年7月にはインターン生も交えて、富士山登頂をされています。また年末にもインターン生の区別無く温泉地で開発合宿をおこなっていらっしゃいます。社員とインターン生の分け隔ての無さが伝わってきます。


○編集後記

雇用情勢の先行き不安な現代を、「学生は自分の進路を決断できずに悩んでいる」という浅賀社長の言葉が映し出しています。そんななかでも、インターン生3名のうち1名が正社員になり、2018年新卒入社者も決定しているベリテワークスの例からは、インターンシップ先の企業が「自分の進路として納得できるに足る企業」であれば、有名無名問わず、悩める学生を新卒入社へ導けると分かります。

ベリテワークスでは、随時学生とキャリア面談をおこなったり、学生のキャリア・人生に寄り添うことを心がけた結果として新卒採用に成功されています。「学生の本業は勉強である」という考えのもと、学生へ配慮が行き届いた環境で、社員やCTO自ら学生に正面から向き合って一からスキル・知識を授けることで、世界の最先端へキャッチアップできる人材が育つのでしょう。

どんな事業領域でも、日本さらには世界の最先端技術に関する情報収集が必要な企業であれば、ベリテワークス同様、中途採用の過程で「語学力の不足」や「仕事への柔軟性の低さ」といった困難に直面するでしょう。このリーディングカンパニー特有の「中途採用の人材不足」に対処する方法として、「長期インターンシップからの新卒登用」は有力な採用手法の1つとなるかもしれません。

著者プロフィール

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石井 英久
都内大学に通う大学4年生。2017年4月より株式会社アイタンクジャパンにインターン生として参画。社内ではHeRmanの企画を主に担当している。専門は雇用関係、社会学。

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