雇用側は103万円の壁とどう付き合うのか。有給インターン生の給料と扶養問題を考える

採用担当として、定期的にインターン生と面談をしたり、シフトの相談に乗ったりしていると、毎年必ずこんな声が聞こえてきます。

「扶養がやばいんです。どうしましょう…」

ざっくりとした質問を…という点は置いておき、「扶養がやばい」というのは要するに、両親の扶養家族として見なされる所得を超えてしまい、扶養者控除が受けられなくなる「給与所得103万円を超えてしまいそう」ということを指しています。
今回は、9月〜11月に陥りがちなインターン生の所得問題について、実際の事例を踏まえてお話しします。

1. 「103万円の壁」とは

所得は、収入から経費(収入を稼ぐための必要経費)を差し引いたものを指しますが、この必要経費を給与所得控除と呼び、アルバイトでは65万円と規定があります。この所得が38万円以下であることが、両親の扶養家族として扶養控除を受けることができる条件の一つになります。

すなわち、収入103万円 - 給与所得控除(アルバイトの場合65万)= 所得38万円となるため、給与が103万円を越えると、両親の扶養家族と見なされず、扶養者控除の適用がなくなるのです。

そうすると、両親は扶養者控除が適用されていれば払わずに済んだ税金を支払う必要が出てきます。
所得38万円 × 税率20%(所得に応じる)= 7万6,000円
こちらの金額が親の税金に上乗せされることになります。

2. インターン生の平均時給から発生可能性を考える

例えば、下記のようなシフトで企業でインターンをした場合。

1日8時間・週3日・時給1,000円のインターンを1年間
→ 8時間 × 12日 × 1,000円 × 12ヶ月 = 115万2,000円
と、103万円を超えてしまいます。

インターンシップだけではなく、土日や長期休暇にアルバイトをすれば、インターンシップが週2日だとしてもギリギリとなってしまいます。
近年、最低賃金の改定に伴う時給アップも多く、大学生がインターンシップに当てられる時間は限られてしまいそうです。

3. 知っておきたい勤労学生控除

所得が38万円以下であることが扶養控除対象の条件ですが、学生自身が勤労者として稼いでいる場合、27万円アップの所得65万円までは本人の所得税が非課税となる制度が勤労学生控除です。
親の扶養対象からは外れるので親にかかる税金が前述の通り増えますが、給与収入は103万円から27万円アップして130万円まで非課税となります。
どこまで稼ぐかは、学生本人と親御さんとの話し合いになりそうです。

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4. 扶養問題をご両親と相談・解決したインターン生の話

冒頭でお話した通り、学生が年間の給与収入103万円を超えそうになると、まずインターン先やアルバイト先の上司にシフトの調整を依頼して来るかと思います。単に、出勤日数を減らすことで解決できれば良いのですが、インターンシップで仕事を任せている以上、極端に出勤時間が減ったり、最悪の場合には退職となったりすると、全体業務にも支障が出て来る場合もあるでしょう。企業側も学生側も困らないように、よく話し合う必要があります。

先日、1年以上勤務している4年生のインターン生から相談がありました。

8月時点で、今年度の収入が80万円を超えており、このままのペースでは働けないという状況でした。
担っている仕事は、マーケティグ部署で自社メディアのWEB広告運用と法人向けのメルマガの作成などで、常に稼働が必要な業務です。もちろん、社員がフォローに入っているので、出勤時間が減ってもカバーすることはできますが、インターン生の中でもベテランとして仕事を任せられるようになった彼が離脱してしまうことは痛手です。
彼も、一人暮らしの生活費の一部を自分で稼いでいる状況であるため、勤務時間を減らして103万円に収まるようにしても月々の収入が減るのは厳しい状況でした。
私たちとしては、勤務時間の調整はできると伝えた上で、あとは本人と親御さんとの話し合いを進めました。

ご両親との話し合いの結果、彼が出した結論は「卒業まで全力でインターンに取り組む」というものでした。
扶養対象から外れても構わないので、今取り組んでいる仕事を精一杯やり遂げなさい、とご両親が認めてくださったようです。
この背景には、この1年間で、彼がインターンシップでどんな仕事をして、その仕事や職場にどんなやりがいがあるかなどを話していたことがあります。私たちも、彼が就職活動を通じてご両親と仕事やキャリアについて話していると聞いていましたので、ご両親もインターンシップでの成長を感じてくださっていたのかもしれません。

学生は、親に税金の負担がかかるということ、今任せられている仕事をやり遂げることを天秤にかけることは難しいでしょう。インターンシップを頑張りたいのであればその気持ちを支援できるように、学生本人が親御さんときちんと相談として、双方が納得できるように後押しをしてあげることが、私たちのできることであると感じたエピソードでした。

5. アルバイトとの両立に悩むインターン生の話

インターンシップに週3日来ている学生もいれば、もともと勤めていたアルバイトと両立している学生も多くいます。
インターンシップは週2日程度でも、土日に飲食店や塾講師などを続けている学生は特に収入が多くなりがちです。
大学1年生から続けているアルバイトなので思い入れもあって続けたいなど、インターンシップで収入をまかなえたとしても、アルバイトはアルバイトで継続するケースも多いのです。

先日相談されたケースは、入社3ヶ月ほどの3年生のインターン生から、アルバイト先の飲食店で昇進・昇給があって時給が上がったため、想定していた勤務日数では103万円を超えてしまうというものでした。

3ヶ月というとやっと仕事を覚えてできるようになってきたところで、次のステップに進んで成果をあげる実感を掴んでほしいというタイミングです。せっかく始めたインターンシップを、週1日4時間ほどだけ勤務するようなシフトにしてしまうのは少しもったいないと感じてしまいます。
ですが、11月の勤務分まで調整できれば、12月からは仕切り直してアルバイトとインターンシップの両立を考えられますので、しばらくは両方ともシフトを減らして103万円に収まるようにしようということになりました。

アルバイトと両立するインターン生の場合に気をつけておきたいのが、意図せずアルバイトのシフトの方が優先されやすいということです。一概には言えませんが、接客や講師、イベントスタッフなど、アルバイトはその日・その時間にいてほしいという時間の制約が強い職種が多いため、意識的にインターン先のシフトを押さえないとアルバイトに偏りやすい傾向があります。そうすると、103万円の壁に当たった時にも、「アルバイトのシフトは決まっているのでインターンはそれ以外でできるだけ…」というような事態にもなりかねません。シフトの組み方は、人事やメンター社員からも定期的に相談に乗ってあげる方が良いでしょう。

6. まとめ

インターン生を採用する時に、「週2日しか来れないんじゃ、任せられる仕事がないなぁ」という声もよく聞きます。現場の方がお悩みの通り、勤務時間が少なければ習熟度スピードは遅くなりますし、頻度が少なければコミュニケーションが図りづらくなりますので、毎日来てもらうに越したことはないかもしれません。
しかし、今回お話して来たように学生本人の意欲とは別に、給与の仕組みとして週3日以上の勤務が難しい場合も出てくるかと思います。
人事担当の皆さんには、学生との定期面談を通じて、本人が授業やゼミ、アルバイト、インターンシップをどのように位置付けて取り組んでいるかを把握し、バランスが取れるように相談に乗ってあげていただきたいと思います。

参考)国税庁
 勤労学生控除
 扶養控除

著者プロフィール

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金子 麻里奈
株式会社アイタンクジャパン営業企画マネージャー兼人事。企業向けに長期インターンシップ導入支援を行い、実績は100社以上。自社セミナーの講師も務める。大学生と企業をつなぐ、良質なインターンシップの普及に邁進中!趣味は手料理。

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